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いつかの毎日。

朝、東の窓から朝日がカーテンの隙間から溢れる。

外からは小鳥たちの鳴き声が聞こえ、

私はゆっくり体を起こす。

 

欲しくて仕方なかった自分の部屋を手に入れて17年。

どんな苦しみもどんな節目も、

その場所があったから乗り越える事が出来た気がする。

 

はたから見たら順風満帆な私の、

真実。

 

実際、その家が自分の家であったのはわずか5年。

7年間、ずっと騙され続けて来て、

気付いた時にはもう遅かった。

 

不満と不安が常にまとわりつくようになった4年間、

私は私を見失うようになった。

自分が壊れそうになるのを止める為に、

その家から出ようと本気で行動し始めた矢先、

私は、

その家を失ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

  『いつでも帰って来ていいのよ。

ここはあなたの家なんだから。』

 

CMで母役の吉田羊が、

新社会人で旅立つ娘にそう言い、

娘は涙を浮かべながら笑顔で旅立つと言うのを見て、

私は顔をしかめた。

 

『そんな誰もが素敵な実家なんて持っちゃいねーよ』

義務教育を経て、

大学に行き、

新卒で社会人。

親からの仕送り。

お盆や正月に実家に帰省。

それが世間のあたりまえなのか。

しかし、私がそれを経験する事はなかった。

親が子供に安心を与えてくれる。

人生をサポートしてくれる。

そいつは一体どんな生活なんだろう。

 

 

今の実家は東に窓がない。

素敵な一軒家だった私の実家は集合住宅賃貸マンションの一室。

小さな道路隣りには用水路があり、

窓を開けると臭い匂いが部屋に充満する事が多々ある。

 

一人暮らしをして半年で隣人トラブルにあった私には行く先はこの今の実家しかなかった。

半年間行方をくらませた姉が既に帰って来ていた為に2LDKでの3人暮らし。

最初はソファだけだったウチに、

母と姉はウチの精神状態を案じて、

ウチに一室を与えてくれた。

相変わらず優しい人達だ。

 

正直、今の暮らしは悪くない。

カーテン一枚で区切り一部屋に2人生活していた母と姉の不穏な空気も、

最近になってやっと収まり、

自分ものびのびと生きれるようになったから。

 

そもそもここには愛する猫もいて、

もう今は姉の姿もここにある。

無理矢理だけど、

とっても狭いけど、

夏には通路にゴキブリがいるけど、

なんか最近エレベーター脇にうんこがこんもりしてあって臭いけど…

帰れる家があるだけで、

私は幸せだと思うんだ。

いや、マジで。

慣れって凄い。

 

あんなに出来なかった創作活動も、

出来るようになって来た。

ただ、

いざ活動をして行くと、

いかに17年住んだあの実家が、

最高の作業環境にあったかが分かった。

あの頃、

本当は気付いていた真実に、

私は蓋をした。

だって、

その方がラクだったから。

アレだけ自由に仕事も創作活動もしながら、

親からのサポートがないなんてよく言える。

あの実家に住めたのは、

母や叔母さんのおかげなのに。。。

 

今となっちゃ何が正解なのかわからない。

ただ私は子供で、

巻き込まれるしかなかったんだ。

気付いて変われなかったのは自分のただの怠慢で、

誰のせいにも本当は出来るはずもない。

ある程度は親のせいでも、

ここまで来たのは自分のせいだ。

 

狭くたっていい。

大嫌いなゴキブリが家の外でなら歩いてたっていい(本当は嫌だけどな!)

荷物でぐつぐつの部屋だって、

本当にやりたければ私は活動ができるんだから。

その自分の場所さえあれば、

他に何もいらない。

……や、お金は欲しいが←

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

けど、

だけど、

たまに思い出すんだ。

 

 

 

私の、生まれ育ったあの町を。

今では足を向ける事するままならないあの町の、

山や鳥や、窓から見える空の色、

入り込む風の心地よさと、

消えない家族の想い出の記憶を。

 

 

 

いつか、大人になったら誰かと結婚して、

子供が出来て、

そしたら自分の子供もまた、

この自然の中で育てて行きたい。

そう思ってた。

幼馴染とは今度はママ友として一生付き合って行くんだと、

そう思ってた。

そんな一番平凡で、あたりまえそうな事が、

いつからか一番遠くにある、

夢物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたりまえじゃなくても良かった。

私が私であれば良かった。

自然を感じられれば良かった。

猫も人も自由に生きられれば良かった。

 

私は、

今の毎日も好きだけど、

どうしても忘れられない。

いつかの毎日。

 

 

今を、あたりまえと生きる全ての人に、

心から伝えたい事。

 

そのあたりまえは、

あたりまえではない。

いつかの毎日はいずれ、

戻る事はない日々に変わる事もある。

 

だからこそこの月日に感謝して生きたい。

以前よりもっと、

ちゃんと、

今度はしっかりと、

真実を受け止めて。